BtoBビジネスにおける商談ステージの重要性と決定方法

商談ステージ

BtoBビジネスにおいて、商談ステージをどのように設定するかは、ビジネスの拡大において非常に重要です。なぜなら、商談ステージを設定し、その全体が把握できるようになっていると、どこに課題があり、改善すればよいかが明確にできるからです。

今回は、BtoBビジネスにおける商談ステージの重要性についてより詳しく解説していくと同時に、どのように商談ステージを決定すべきかについて考えていきたいと思います。

この記事の目次

BtoBビジネスにおける商談ステージの重要性

商談ステージ01

商談ステージ01

BtoBビジネスはBtoCビジネスよりも相対的に商品やサービスの購入までに多くの時間を必要とします。組織として決断をする必要があり、さまざまな利害関係者の調整や稟議書の承認などが必要だったり、価格が高額なものであればより比較検討を重ねて購入の意思決定を行うことが多いことが理由として挙げられます。

このようなBtoBビジネスにおいては、商談が同時進行でいくつも進んでいきます。そうすると、現在、どの商談がどういう状態で、次にどういったアクションが必要なのか、そのすべてを把握するのが難しくなってきます。

また、長期的にお客様が検討を重ねることで、お客様や自社の担当者が異動や退職などで変わってしまう、ということもしばしば起こります。こうした複雑性を目に見える形にするのがSFA / CRMであり、そのSFA / CRMの中で行う商談管理(=案件管理)です。

商談がいまどういう状態であるかを表したものが商談ステージですが、なぜこの商談ステージが重要なのでしょうか?その重要性について4つのポイントを挙げたいと思います。

1.組織内での情報共有

商談ステージを設定することは、各案件が現在どのステージにいるのかをSFA / CRMなどで見える化することにつながります。

見える化されることで誰がどのくらい案件を抱えているのかを把握でき、営業マネージャーは営業組織のリソース配分を考えやすくなります。

2.プロセスの最適化

商談ステージを設定することによって、営業プロセスの最適化を図ることができるようになります。各案件がどのステージにいま何件あるのか、またそれぞれの案件がどのステージで滞留しているのか、などを見ることができるようになります。

例えば、ひとつのステージに多くの案件が滞留している場合は、そのステージをもう少し細分化する必要があるかもしれません。

反対に、とあるステージはまったく滞留することがない、ということであればそのステージは不要なのかもしれません。

こうした営業のプロセスを最適化を繰り返すことでより効率的な営業活動を行うことができるようになります。

3.目標設定と実績の把握

商談ステージの設定は、目標達成にも大いに役立ちます。

現在、どのステージに何件案件があるのかを把握することによって、今月・四半期・今年度でどのくらいの商談が受注になりそうか、またその金額はどのぐらいの金額になりそうかを予想することができるようになります。

ある程度データが蓄積されると、

見積もりを提出した案件の受注率は4割である

というような確率がわかるようになってきます。

そうすると、見積もりを提出した案件が10件あったとすると4件受注になるだろう、平均受注金額が500万であれば、

500万円 × 4社 = 2,000万

の受注が見込める、と予測ができるようになります。

その金額が目標に対して達成見込みであるのか乖離があるのかによって、その後どのような営業活動をすべきかを決定することができるようになります。

4.レポート機能によるリアルタイムでの把握

商談ステージの決定とともに、それをHubSpotのようなSFA / CRM にデータを蓄積すると、それをレポートとしてグラフや表として即時反映させることができます。

集計表を作り直したり、議事録に数値を移したりする必要もなくなるため、効率的な報告ができるようになり、営業組織内の会議でもより具体的な議論に時間を使うことができるようになります。

BtoBビジネスで商談ステージを考える際に気をつけるべきこと

ここまでBtoBビジネスにおける商談ステージの重要性について話してきましたが、ではどのように商談ステージを決定すればよいのでしょうか?

ある程度経験がある人であれば、概ねどのように作ればよいか検討がつくかもしれませんが、はじめて商談ステージを作成しようとする方には難しいかもしれません。

ここでは商談ステージを作成する際にどういった点に気をつけて作成していくべきか、について解説していきたいと思います。

ビジネスモデルを理解する

当然ですが、どういったビジネスモデルを展開しているかによって設定すべき商談ステージは変わってきます。

例えば、広告代理店の場合は、現在利用している広告媒体として何があるのか、そしてそれはどのくらい成果を出しているのか、それに対して自社の場合、どのくらいの成果を出せそうなのか、どんな媒体が適切なのかと言った内容を顧客と合意したうえで進めていく必要があります。

一方で、有形商材を取り扱う製造業などの場合は、取り扱う製品が顧客のオフィスにそもそも物理的に納品できるのかを確かめるために納品場所の状態を実際に訪問して確認する必要があるかもしれません。

また無形商材であれば、顧客に対してデモンストレーションを実施した上で、導入を検討してもらう必要があるかもしれません。このように、どのようなビジネスモデルを展開しているかによっても商談ステージの決定方法は変わってくるでしょう。

現状の営業方法をトレースする

すでに誰かが営業を行っているのであれば、その人がどのように営業を行っているのか、というのをトレース(後追い)することによって商談がどのように進んでいくかを見極めることができるでしょう。

ただし、人によっては独特な(他の人が真似できない)営業方法を行っている場合もあるため、可能であれば複数人の営業方法をトレースし、どういう順番で商談が進んでいるかを確認するようにしましょう。

商談ステージの定義を明確化し、共通認識とできるか

商談ステージの設定においてもっとも重要なことは、商談ステージの定義を明確にすることです。

例えば「受注」という商談ステージがあったとします。この受注というのはどういう状態を表すのでしょうか?

人によっては、顧客から「ぜひ導入する方向で検討したいです」と返事をもらった段階を受注とする場合もあるかもしれません。一方で別の人は、顧客からの意思を確認したのちに、契約書の締結が完了したタイミングで受注だと考える人もいるでしょう。

この場合の前者と後者ではおそらく数日から数週間、違いが出てきてしまいます。もしかしたら契約の段階で、先方との契約内容が折り合わず失注になるかもしれません。

こうした認識の違いがあると正確なデータを取得できず、商談ステージを運用する意味が半減してしまいます。

また、この定義を複雑にしすぎると、運用している営業チームが内容を覚えられずにそれぞれの解釈によって商談ステージが運用されてしまい、こちらも認識の齟齬が生まれてしまいます。定義は人によって解釈が変わらないようになるべく簡単かつ明確な内容にしましょう。

商談ステージは変化を伴うものだと理解する

商談ステージは常に変化をしていくものです。

例えば商品が変われば商談ステージも変わる可能性がありますし、商品を販売する顧客が中小企業なのか、大企業なのかによっても変わります。

また、商談ステージを運用していると、商談がよく滞留するステージとそうでないステージが出てきたりします。よく滞留するステージの場合は、もしかしたら、商談ステージを細分化する必要があるかもしれませんし、全く滞留しないステージは本来必要ないステージかもしれません。

商談ステージは変化を伴うものでもあるし、状況を見ながらより洗練させていくものだと理解しましょう。

BtoBビジネスで商談ステージをどのように設定すべきか?

特にはじめてBtoBビジネスで商談ステージを設定する際は、わかりやすさを重視する必要があります。

最初から複雑にするのではなく、はじめはある程度簡易的なもので設定し、徐々に細分化、定義を細かく決めていく、という方式をオススメします。

はじめから複雑にしてしまうと、運用が回らなくなり、結果として商談の状況が実際どうなっているのかヒアリングを行わなければならず、本来目標を達成するために設定した商談ステージであるのに、会議などではただただ商談の状況を確認するだけになってしまうかもしれません。

そうした状況にならないためにも以下のような商談フェーズ設定からはじめるのが良いでしょう。

ステージ名 ステージ名(日本語訳) 期待値
Appointment Scheduled アポイント設定 10%
Initial Pitch 初回面談済 10%
Proposal 提案済 40%
Price Quote 見積もり提出済 50%
Verbal Commitment 口頭承諾 80%
Closed Won 受注 100%
Closed Lost 失注 0%

上記のポイントとなるのは、ほとんどのステージが行動を表す、という点です。

アポイントメントを獲得した、初回面談を実施した、など客観的にわかりやすく、ステージを扱う営業チーム内で個々の認識の差が発生しづらいステージになっています。

こうしたステージであれば、比較的運用も問題なく進められます。

上記をベースとしつつ、ビジネスモデルに合わせて例えば「デモンストレーション実施済」、「実地調査済」(顧客に物理的に納品する必要がある製品等)などを追加することを検討しても良いでしょう。

ある程度、上記の商談ステージで運用ができるようになったら、それぞれ次のフェーズに行く遷移率を見たり、明らかに滞留するステージがあれば、より細かなステージを構築したり、定義を細かく設定したりしていくと良いでしょう。

次の章からは日本でもよく利用されているSalesforceHubSpotにてデフォルトで設定されているステージについても見ていきたいと思いますので、商談ステージの設定の参考にしましょう。

Salesforceにおける商談ステージの考え方

Salesforceでは以下の10個のステージがはじめに設定されています。

見ていただけるとわかるかと思いますが、Salesforceにおけるデフォルトの商談ステージは、ステージと定義をしっかり定める必要がある内容になっています。

ステージ名 ステージ名(日本語訳) 期待値
Prospecting 見込み顧客 10%
Qualification 営業対象顧客 10%
Needs Analysis 顧客のニーズ把握・分析 20%
Value Proposition 提供価値の把握 50%
Id. Decision Makers 意思決定者の特定 60%
Perception Analysis 顧客の認識理解・分析 70%
Proposal/ Price Quote 提案書・見積書提出 75%
Negotiation/Review 最終交渉 90%
Closed Won 成約 100%
Closed Lost 失注 0%

Prospecting(見込み顧客)

営業対象となるかまだ定まっていない見込み顧客。

ビジネスモデルや取り扱い商材などによっても定義を明確化させる必要がありますが、ターゲットを法人と定めている、ということであれば、株式会社や有限会社、合同会社などの法人格を持っている顧客を見込み客とする、というような定義もできるかもしれません。一方で個人事業主や学校法人などはこの段階で排除する、ということも考えられるでしょう。

Qualification(営業対象顧客)

営業担当が営業対象とする顧客。

上記見込み顧客の中で、どういった条件であれば営業対象とするのか、その情報を見込み顧客から入手し、それが明確になった段階でこの商談ステージに移行となります。例えば、先述したBANT(*注)のBudgetが100万円、Authorityがマネージャー、課長などの役職者(もしくは決裁権を持っている)といったような条件を設定することができるでしょう。

注:BANTとはB:Budget、A:Authority、N:Needs、T:Timingの頭文字を取ったもので予算、決裁権(役職)、ニーズ、タイミングを表します。

Needs Analysis(顧客のニーズ把握・分析)

顧客のニーズが把握できた段階でこの商談ステージに移行します。BANTで言えばNにあたります。

営業対象顧客としたものの、顧客自身にニーズがなければ、その先受注になることはないでしょう。

Value Proposition(提供価値の把握)

把握した顧客ニーズに対して提供できる自社商品・サービスの価値が合致している場合はこの商談ステージに移行します。

ニーズがあったとしてもそれを満たす価値を提供できなければ購入にはいたりません。顧客に対してしっかり価値が提供できるのかを見極めます。

Id. Decision Makers(意思決定者の特定)

受注にあたっては誰が意思決定者なのかを把握することが重要です。

いくら、意思決定ができない人に提案をしたところで、その提案は効果が薄れてしまいます。意思決定者が誰でその人はどういう課題意識を持っており、それを解決できるものなのか、根気よく説得することが必要になってきます。

Perception Analysis(顧客の認識理解・分析)

顧客のニーズとそれに対する提供価値、それを顧客に理解してもらえているかを見極める商談ステージです。

顧客が自社サービスの利用によって課題が解決する、ということについて懐疑的であれば、提案や見積もりを提出してもそれに対してお金を払う決断はしてもらえません。

Proposal/ Price Quote(提案書・見積書提出)

提案書・見積書の提示段階の商談ステージです。

改めて課題の認識合わせ、そして課題解決の提案を行い、見積もりを提出する段階です。

Negotiation/Review(最終交渉)

提出した提案書に対するフィードバックや見積り金額の交渉を行っている状態の商談ステージです。

ここで最終的な提供価値と金額を明示し、それに対して納得してもらう必要があります。

Closed Won

受注。一般的には契約締結が完了した段階でこの商談ステージを指します。

契約書の内容によっては、この手前段階で失注になることもありますし、契約締結に時間を要することもあります。Closed Wonになれば、請求が発生することになります。

HubSpotにおける商談ステージ(取引ステージ)の考え方

HubSpotでは、以下のステージがデフォルト値として設定されています。

デフォルトで設定されているということは、一般的に利用されることが多いステージとも言えます。もちろん、それぞれビジネスモデルが異なるため、各社のステージは変わってきますが、下記をもとに変更していくのが良いでしょう。
※なお、HubSpotでは商談のことを取引と呼びます。

ステージ名 ステージ名(日本語訳) 期待値
Appointment Scheduled 予定されているアポイントメント 20%
Qualified to buy 購入適格 40%
Presentation scheduled 予定されているプレゼンテーション 60%
Decision Maker Bought-In 意思決定者の賛同 80%
Contract sent 送信した契約 90%
Closed won 成約 100%
Closed lost 失注 0%

ステージ名(日本語訳)については、HubSpotの言語設定を日本語にした際に訳されるステージ名で、このままだと意味がわかりにくい日本語訳になってしまっています。もう少し各ステージの意味を解説したいと思います。

Appointment Scheduled(予定されているアポイントメント)

見込み客とのアポイントメントが獲得できたらこのステージとなります。

HubSpotにおいてはアポイントメントの獲得が商談のスタートということなります。定義をどのように定めるかにもよりますが、通常は、アポイントの日付、時間が設定できた段階で商談を作成し、このステージに移行させます。

Qualified to buy(購入適格)

購入適格、という日本語訳となっており、意味がなかなかわかりづらいですが、自社製品を購入する可能性のあるお客様か、ということを表したステージです。

こちらについても定義をどのように定めるか、が重要になってきます。

Presentation scheduled(予定されているプレゼンテーション)

提案を行うアポイントメントが取得できた状態を表す商談ステージです。

この段階では具体的な提案は行っていない状態です。

Decision Maker Bought-In(意思決定者の賛同)

意思決定者がぜひ商品やサービスを購入したい、という意思表示をした段階の商談ステージとなります。

Contract sent(送信した契約)

契約書の相互レビューが完了し、契約締結のやりとりがスタートした状態を表します。

Closed Won

受注。一般的には契約締結が完了した段階でこの商談ステージを指します。

契約書の内容によっては、この手前段階で失注になることもありますし、契約締結に時間を要することもあります。Closed Wonになれば、請求が発生することになります。

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